「一人称単数」(村上春樹)
「人間の在り方」について疑念を抱かせるような 「一人称単数」(村上春樹)文春文庫 ここで語ろうとしているのは、一人の女性のことだ。とはいえ、彼女についての知識を、僕はまったくと言っていいくらい持ち合わせていない。名前だっ...
「人間の在り方」について疑念を抱かせるような 「一人称単数」(村上春樹)文春文庫 ここで語ろうとしているのは、一人の女性のことだ。とはいえ、彼女についての知識を、僕はまったくと言っていいくらい持ち合わせていない。名前だっ...
何かが「崩れ去った」のではなく 「マシアス・ギリの失脚」(池澤夏樹) 新潮文庫 朝から話をはじめよう。すべてよき物語は朝の薄明の中から出現するものだから。午前五時三十分。空はまだ暗いのに、鳥たちが巣を出て騒ぎだす。東の空...
「人の生と死」に真正面から向かい合った児童文学 「キップをなくして」(池澤夏樹)角川文庫 東京駅構内で「駅の子」として 暮らすことになったイタル。 気がかりなのはいつも元気がない 女の子のミンちゃん。 「なんでご飯を食べ...
これこそが本当の学びの姿です。 「キップをなくして」(池澤夏樹)角川文庫 改札口でキップを なくしたことに気付いたイタル。 「キップをなくしたら 駅から出られないんだよ」と 声をかけてきた フタバコとともに向かった東京駅...
マルチ文芸人の本領発揮的詩集 「この世界のぜんぶ」 (池澤夏樹詩/早川良雄絵)中公文庫 池澤夏樹は「真夏のプリニウス」 「マシアス・ギリの失脚」といった 小説で知っていました。 また「母なる自然のおっぱい」を はじめと...
8年目の3.11にあたり 「春を恨んだりはしない」(池澤夏樹)中公文庫 前回、前々回と取り上げた 「双頭の船」の著者・池澤夏樹の、 東日本大震災を巡るエッセイ集です。 池澤夏樹が東日本大震災から 何を感じ、何を考えたかを...
さて、では、主人公は誰なのか? 「双頭の船」(池澤夏樹)新潮文庫 前回、この物語の主人公は 船であると書きました。 では、 人に存在感がないかといえば、 決してそうではありません。 個性的な登場人物ばかりです。 まずは第...
主人公は船・さくら丸 「双頭の船」(池澤夏樹)新潮文庫 船はそのまま陸地に向かい、 やがて広い砂州に 静かに乗り上げて なおも前進を続け、 砂州が終わって 丘陵になるところまで行って 舳先を丘の辺に 接するようにして止ま...